2001年4月8日ギャラリートーク

国立科学博物館ではかはくウィークという催しものの一つとして
ギャラリートークを実施していました。
8日は新館地下1階で地学研究部真鍋研究員による解説がありました。
子供達の無遠慮な知ったかぶり発言に統制を失いそうになりながら
精力的に大きなジェスチャーを交えてお話して頂きました。
マイクは殆ど用をなさず肉声だけで話しておられました。
お話はホールの入り口の前で始まりました。
氏の学生時代には指導教官が哺乳類専攻で恐竜は下等な動物なので
環境の変化についていけずに絶滅したのだと聞かされたと話しておられました。

好きな恐竜の名前を挙げて下さいと切り出すと
子供達からお定まりのティラノサウルスやアパトサウルスが出てきたあと
ギガノトサウルスという子供の声があがり 周囲の大人達から よく知っているなあと
感嘆の声あり。やはり子供からヘレラサウルスという声があがり
「まるで お願いした様な答えですね。」と笑いをとりながら「では そのヘレラサウルスは
どこに いるか知っていたら そこに行って御覧」と言って見学者をホールの中へ
移動させました。

ヘレラサウルスは2億2000年前の南米の地層から見つかった原始的な
肉食恐竜で古い時代のものであることと原始的な特徴を持っているが
既に恐竜としての特徴が揃っている。二足歩行でワニのようながに股でない。
我々にも鎖骨がある。鎖骨は鳥 デイノニクスやベロキラプトルに見られる。
恐竜が絶滅したというが恐竜は鳥として今も生きていると恐竜学者の90%
の人は考えている。ラプトルの仲間で最近名前がついたバンビラプトルという
恐竜をヘレラサウルスの右となりに展示している。
体が小さいが大人である。その他ミクロラプトルという
恐竜もいる。始祖鳥はこんなに小さい。デイノニクスやベロキラプトルが鳥に近い
といっても大きさが違い過ぎるので違和感があったがバンビラプトルやミクロラプトル
のような小さい恐竜が見つかったので こうした恐竜から鳥がうまれても
不思議はない。
 映画ジュラシックパークの中で部屋の中に逃げ込んだ人間を追い掛けて来た
ラプトルがドアのノブを回してドアを開ける場面があった。あれはマイケル クライトンが
恐竜について深い知識があったことを示している。ベロキラプトルの手首は回旋するように
なっている。これは鳥の羽の飛翔運動の際も手首を回しているのと共通点がある。
一般に恐竜は肩も手首も前後にしか動かず回旋しない。前肢を左右に広げている復元を
見たら それは間違いである。

ティラノサウルス

この標本はスタンと呼ばれている 保存状態の良い骨格のレプリカである。
ティラノサウルスは全長12メートルもある大きな肉食恐竜でその頭はずば抜けて
大きい。頭にたくさんの穴が空いている。昔は大きな頭を少しでも軽くするために
こうした穴があると考えられていた。しかしコンピューターでシュミレーション
してみると こうした穴のお陰で強い力が加わっても歪みを分散させて丈夫にできて
いることが分かった。
スタンは何歳位だろうか?子供の中から「80歳」と声あり。
どうしてそう思うのか?「現在 陸生の動物で一番大きいのは象だ。象の寿命は
80歳だ。だから 大きな恐竜は80歳位だ」
これまでティラノサウルスの年令を調べた研究はない。しかしアパトサウルスの
ような竜脚類の大腿骨の骨幹部を横断する標本を作って調べてみると木の年輪の 
ようなものがあり何歳かが分かるという研究はある。
 大きさから年令を当てることはできない。早く大きくなる動物もあれば
ゆっくり大きくなる動物もある。

アパトサウルス

科博のアパトサウルスは大変保存状態の良い骨格である。
アパトサウルスの首はなぜこんなに長いのか。(子供達から「高い木の葉を食べるのに
都合が良いから」と声あり。)それは違う。この首はそんなに高く持ち上げることは
できなかったと考えられている。首はまっすぐ前にのびていただけだったと主張している
論文がある。その論文の著者が調べた首の骨は保存状態が良く無かった。そこで ここ科博の
アパトサウルスの首を折角組み立ててあるのをばらばらにして調べてみた。すると首はそんなに
上には曲がらなかったことが分かった。

トリケラトプス

このトリケラトプスは半身が侵食された状態で発見されたので右半身しかない。
しかし保存状態は非常に良いので折角だから発見された際の姿にできるだけ近い形に
展示しようということで半身だけの展示になっている。トリケラトプスの骨格で保存状態が
特に良いものは世界に2つしかない。これはそのうちの1つでしかも 2つのうちでは
こちらの方が状態が良い。とは言っても尾の部分は失われていたので ここにある尾は
後から付け足したものである。また3本の特徴ある角のうち鼻先の角は失われていた。
耳の後ろの角は本物である。発掘した人に実際に真鍋氏が会って聞いた。

パキケファロサウルス

このヘルメットのような分厚い頭は何のためにあるのか。
以前は個体の優位を示すために頭突きをしたのだという説があった。
しかし首の骨はとても頭突きに耐えられるような丈夫なものではない。
多分見た目だけのディスプレイのためだったと思われる。
科博では 頭突きをしているような展示を採用しなかった。

コリトサウルス

コリトサウルスの成体と幼体の骨格を見ると成体の頭にはとさかの様なたかまり
があり幼体にはそれがない。このとさかの様な部分は音を出すのに役立ったと
考えられている。音を出すことにより肉食恐竜の接近を知らせて警告したり
その他 仲間同士のコミュニケーションをしていたのだろう。
(なんで この子供のコリトサウルスは大きいのかという質問あり。大きな子供だからと
という答え)

ランベオサウルス

とさかの立派な方を雄 とさかの小さいのを雌としているが そうだという決め手は
ない。反対かも知れない。

ステゴサウルス

背中の あの3角の板は何の役をしていたのだろうか。
防御の役をするとすれば1)大きく見せる。2)噛んだら硬いので食べるのをやめる
温度調節に関係するという説がある。しかし日を浴びて体温を上げるというのは
無理だろう。ラジエーターの様に体温の上昇を防ぐということはありそう。
尾の角は折れて それが治った跡が残っている標本があるので 武器として
振り回していただろう。

エウオプロケファルス

ステゴサウルスと共通の特徴をもつ。鎧竜の鎧のような骨は餃子の角をつまみあげた
ような形をしている。鎧というイメージとは裏腹に鎧のさねの一つ一つは薄い外殻を
持った中空の骨でとても外敵から身を守るようなものではない。

恐竜の性別

ピーター ローソンがワニの解剖を元に恐竜の雌雄が分かると言っているが
あれはワニではそうだというだけで 恐竜にあてはまるとは限らない。
血道弓の位置と大きさの問題にしても どの血道弓の化石をどの順序に並べるか
は研究者の考えによるものであって 発掘した時に整然と並んでいる訳ではない。
博物館で見られる復元が正しいという保証はない。

恐竜の絶滅とKT層とサンディの化石動物

恐竜が絶滅した6500万年前は恐竜はわずか8種類しかいなかった。その少し前は
16種しかいなかった。種の多様性が失われた時 環境の変化に対して生物は
もろくなってしまい滅亡し易くなる。しかし科博が持っているサンディの化石は
2000点にも及ぶ。そこには20種類位の恐竜化石があるようだ。
従来と異なった見解が出そうだ。何か新しい事実が出たらこのコーナーを書き換えていく。
絶滅の原因は巨大いん石の地球への衝突による砂塵が陽光を遮り、植物の生育をさまたげ
植物食恐竜の衰退を経て肉食恐竜の絶滅が起きたと考えられる。

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