ディスカバリートーク


国立科学博物館(東京 上野)の研究者が最新の研究成果を披露するというコンセプトで行なわれる
催しがあります。2006年2月5日には真鍋研究官の最新恐竜論についての講演があるということで
行って来ました。15分前より受け付け開始で先着15名とのことで30分前現地到着を目指しました。
壁に貼ってあるポスターの案内に従って進むと 人々が列を作っているのですぐ場所が分かりましたが
 並んだ場所は恐竜の展示されている新館地下2階ではなく絶滅哺乳類や海棲爬虫類の展示されている
地下1階でした。壁際にわずか3畳程のスペースをポールとテープで縄張りした中に2列に椅子を並べた
会場でした。講師がボランティアガイドの腕章をつけた人々と開演前のおしゃべりに興じていました。
受け付けが始まり氏名を記帳してみると私は12番で席が確保されたことを確認しほっとしました。
イヤーフォンの付いた首から釣り下げる無線器とボードとディスカバリートークと印刷されたメモ用紙
と消しゴム付き鉛筆を手渡され着座しようとすると私の座る場所が見当たりません。先客に空いている
席へ詰めてもらってようやく確保した席は前列右端で講師に対し最短距離になりました。

無線機の役割は講師の声がイヤフォンを通じて聞こえるようにすることのようですが会場が狭いので
無用の長物でした。むしろ着席できずに テープによる仕切りの外側にいる人々に使わせてあげたら
良さそうなものでした。講師が「これは 展示の前を移動しながら 参加者に語りかけるのに便利だ」
と言っていました。会場が恐竜ホールでなく哺乳類と海棲爬虫類の展示室でしたし講師は専ら
(もっぱら)展示室の壁に埋め込まれているディスプレーを使って講演したので 機械の性能を発揮する場が
なかったわけです。
机の上のハンドヘルドコンピューターをタッチペンで操作して画面変換をしながらの講演でした。
ヘッドセットを付けて講師が語り始めるのですがマイクの位置が合わないのかイヤーフォンへの
音の入りは今一つでした。

さて この日は1)ティラノサウルスについて2)鳥と恐竜の関係そして3)トリケラトプスの前足に
ついて最近の話題3つについてお話頂きました。


昨年2005年はティラノサウルスが命名されて100年の記念になる年でした。
それで国立科学博物館でも恐竜展でスーと名付けられたティラノサウルスの展示を行ないました。
スーは12.8mもあります。スーを調べて色々なことが分かりましたが その一つは尾の長さの
問題です。従来尾の長さはさして重要でないとされて来ました。が、スーによって初めて尾の長さが
確定しました。そうしてみるとこの尾の長さが 計算上もちょうど良いことが分かりました。
シュミレーションしてみると尾が長過ぎても短すぎても転び易いことが分かりました。ティラノの
前足は肩から指先まで約1mです。柔道の受身の技は使えないとすると頭の高さは5mもあり転べば
深刻なダメージをこうむるでしょう。
 ティラノがどの位速く走れたかというより どうしたら安全に走れるかということに研究者の関心が
移っています。

手の役割について
手は下をに届かないので一時言われたような「手を楊子のように歯の間にはさまった食物片を取る」
ことはできません。
ここで問題ですが手は何かの役に立っていたと思う方は手を上げて下さい。次ぎに手は何も役をして
いなかったと思う方は手を上げて下さい。恥ずかしくて手を上げられない方は私に見える程度に胸の
前で小さく手を振って下さい。(私には講師のジェスチャーはティラノサウルスの手を模している様に
見えました)40人位のうち多くの方が何かの役をしていたと考えているようです。
 手の使い方の一つとして 獲物を口で食わえて手で獲物を突き放すようにして 肉を食いちぎるのに役立ったとする説があります。  昨年6月の学会で 肘は肩より前には出せないだろうという見解の発表がありました。
そうすると 今言ったような突き出しの動作はできないことになります。後ろへの振りは可能です。
 ティラノの手は 肘から先が極端に短いのですが肩から肘まではさ程短くありません。手の甲の骨は
第3の指のための骨があるのですが、指先は2本しか 無い。身体が大きくなって 頭が重くなってから
 バランスを取るために腕を短くしたのではないかとも思えます。

 さて ティラノはどんな寝姿をしていたのでしょう。オレゴン大学のケントスティーブンという人は
ティラノはメイという寝姿で有名になった恐竜と同じ様な姿勢は不可能です。メイの様には首を後ろに
曲げられないからです。3トンから6トンもある動物は(ラクダの様に)しゃがんだら立ち上がれるので
しょうか。

オレゴン大学のケントスティーブンという人はコンピューターを使ったシミュレーションを行ない
しゃがんでも大丈夫という意見を発表しています。
昨年(2005年)10月の学説に腕立て伏せ的なモーションで立ち上がりを腕が補助したというのが
ありました。一押しの仮説とは思わないが 講師自身は可能性のある説と思っています。


話しは換わって始祖鳥は鳥か?という話題です。
ジョン オストロムは始祖鳥の羽毛を取り去れば ただの恐竜に過ぎないと述べています。
 さて 従来は叉骨や羽毛があれば それは 鳥っぽいと 歯、鉤爪、長い尾があれば それは 恐竜っぽいと
いう印象がありました。
 1996年以降は羽毛があるだけでは鳥とは 言えなくなりました。羽毛の生えている恐竜の化石が相次いで
見つかったからです。  さて ニワトリの骨格を見てみましょう。そうすると指の内 1本が後ろ向きに生えていて 後ろ側から 木をつかみやすくなっています。(続く)

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