州立恐竜公園

アルバータ州立恐竜公園のことは恐竜学最前線の第4弾 吉永みち子のカナダ恐竜紀行にも出ていますが
  私が旅行社に申し込んだ時はまだその雑誌は出ていませんでした。
1992年発行のLonelyplanet社のTravel survival kit という旅行ガイドにはティレル
博物館のフィールドステイションがここにあること、ほぼ完全な骨格が発見された時の
状態でガラスケースに収められている展示が4箇所あること異様な侵食された景観
を見せる案内付きの歩道があること 夏は$1.50 のbus tourがあると書いてありました。
ジオという雑誌の創刊号に恐竜公園のカラー写真がのっていて地面は焦げ茶色で
金色の後ろ足をはね上げたトリケラトプスの像の上に人間が乗ってロデオのようなポーズ
を取っている写真と空に恐竜の形をした風船が上がっている写真がありました。
  これ以上の予備知識は全くなく ただドラムヘラーからも遠いらしいので恐竜公園訪問
に1日をあてることにして出かけました。旅行社からはBrooksに宿泊してはどうか<というBR> 提案があった他は何も追加のレクチャーはありませんでした。Brooksは後で地図
で見ると恐竜公園の近くの町ですが 旅行社と旅の相談をしている時はそんな地名
を知らなかったので 折角の提案をボツにしてしまいました。具体的な計画は全くな
いままに出発。カナダのバンクーバーで現地の旅行社の社員からレクチャーを受けた
時もこの社員はドラムヘラーも恐竜公園も行った事がないので何も説明できないとの
ことでした。
Drumhellerへ案内してくれたガイドが翌日の恐竜公園に連れて行ってくれる
のですが彼も物心付かない時に父親に連れられて恐竜公園を訪ねたことがあるきりで
どんな所か全く知らないと言っていました。彼はDrumhellerに着いてから博物館やA
MA(自動車協会)(JAFみたいなものでしょう)に電話して情報を集めたようで
す。とにかく早めに現地に行ったほうが良さそうだというのでDrumhellerを8時に出
発。洗車したてでまだ水滴がついている車で迎えに来てくれました。

いよいよ恐竜公園へ

 朝8時ドラムヘラーを出発。曇り。タンクローリーのたくさん通っているドラ
ムヘラー峡谷の中の10号線を東進。56号を南下。車が少ないのと道が1
直線なので助手席に置いた地図を見ながら。時々雨。左右に広がる農地に牛
の姿が多い。カントリーソング専門のラジオにダイヤルを合わせ軽快な走り。
 ガイドのG氏は「起伏の多い所では丘の高い所には家が建っていないのが
わかりますか。高い所はインディアンのお墓があったと云われています。イ
ンディアンに対する遠慮もあるけどお墓の上に住むのは気持ちが悪いと思う
のでしょう。」



 1号線に入ってすぐ550号に出て東へ。舗装の良くない田舎道に入ると
要所要所に恐竜公園への方向を示す茶色の背景に黄色の文字で書かれた立て札
がある。それに従って行くと舗装のない細い道路になり やがて起伏の多い
月面のような荒れた土地に次第に降りていく。
  樹木が茂って心地良さそうなキャンプサイトがありモーターホームが
  たくさん止まっている。午前9時40分 登り坂を上り詰めた所に砂利で舗装
された駐車場があり 突き当たりの建物がティレル博物館の恐竜公園 フィールド
 ステイション。 夏の日差しがまともに 降り注いでいる。「警告!本日の紫外線有害度は中等度」
という立て看板。GIOという雑誌にはフィールドステイションの風景とし
て地上には金色のロデオをするトリケラトプスと空には竜脚類の形をしたア
ドバルーンの紹介があったが 私達が行った時はそんな物はなかった。

建物の入り口の右には
ベージュ色のスティラコ
サウルスの肉付きモデルが置かれ
ていた。
その鼻の上の長い角に鎖で
つながれた犬が居た。
午後7時から映画と講演が
あるとのポスターがあった。
最初のガラスの扉を入った所に来館者のサイン帳があった。
JAPANと書き込んでおいたら 後から来た人がOh Japan!
と声をあげているのが聞こえた。何と物好きな奴だと思ったに違いない。
 建物の中はひんやりとした冷房。入ってすぐ右の壁にケントロサウルスの
ボーンベッド(骨がやたら たくさん密集して見つかる所)のレプリカ。その奥に
受付があって女性が二人。壁に本日の園内ツアーのバスの空席状況が書かれている。
午前のバスに空席が1つ。妻と一緒にバスに乗りたかったので午後2時のバスを待つ事にする。
バスのチケットを買う為の整理券を11時過ぎに配るというのを聞いてから園内を回る
ドライブコースに出る。このドライブコースは一方通行になっていて途中に幾つか駐車場が
あり 駐車場の隅か または駐車場から歩いて行ける所に恐竜の化石を展示する小屋がある。

こうして化石が発見された場所に小屋を建てて展示するという やり方はCharly Sternberg
によって1958年に行われた。(とGardon Reidの州立恐竜公園の本 に書いてある。)
 「鳥小屋」の中の化石の展示の中には掘り出されたカスモサウルスやケントロサウ ルスの頭がそのままコンクリートの床に置いてあるような物もあれば まだそこに埋 まっている状態で 表面だけがクリーニングされているハドロサウルスもある。

前者 のタイプの展示では発掘されたばかりの頭の骨は平たく潰れていて博物館で展示 されているような高まりは無い事が分かる。
後者のタイプの展示では小屋の 周囲がそのまわりの土地よりも掘り下げてあり 実際にそこで発掘が行われ たことを偲ばせる。  

バッドランド トレイル

ドライブ コースから2カ所のハイキング コースへ行けるようになって おり、所要時間は45分と90分ということだった。短い方( 2.5km ) の ハイキング コース(Badlands Trail)を歩いてみた。人影は全くなく さ わさわと吹く風の音だけが聞こえる。所々(16カ所)に立派な金属製の立看板 があってバッドランドの名前の由来、この土地の地質の様子を説明してある。 砂利での舗装はまもなく途切れ、岩盤の上に小石が並んでいて コースの外 縁を示しているだけの場所がある。ベントナイトと呼ばれる風化した火山灰 でできた砂?をかぶった坂道は雨の降った後は非常に滑りやすくて危険なた めハイキングやバスツアーは取りやめになるそうだ。公園の年間降雨量は 300mm位でかなり少ないが 降る時は短時間に強く降るとのこと。遠方 をはるかに見透かし 公園の大きさを体感しようとするが 広すぎてよく分 からない。緑が少ない分だけ小さな花や歩道を横切る小動物に自然に目が行 く。  ハイキングコースはループ状になっていてもと来た道に自然に戻れるよう になっている。 3番目のハイキングコースを行く人達は盛り上がった地層の壁をよじ登った りして 自由気ままに歩いているように見えるが レンジャーが常に監視し ていてコースをはずれて行く事はできないようになっているとのこと。

フィールドステイション

 フィールドステイションの中に戻り展示物を見学。後ろ脚をはね上げて歩 く姿に組み立てられたカスモサウルスの全身骨格 貝の化石がびっしり詰まっ た岩盤 チャンプソサウルス(ワニの類)の全身骨格 全身骨格で構成され たランベオサウルスを襲うドロマエオサウルス達の迫力あるジオラマなど。   ダスプレトサウルスの全身骨格が発掘された時の姿で横たわっている展示 はことの他 臨場感があった。映画を上映しているコーナーもあり階段状の 観覧席に腰をおろして しばし休憩。ガラス越しに覗くことができるように なったクリーニング ラボラトリーがあった。人影もなく部屋の明かりも消 えていた。クリーニング ラボの見学時間はちょうど私達が乗る予定の園内 ツアーバスの時間に重なるので見ることはできなかった。  昼飯はDinosaur Service Center という建物の中のテイク アウトの店で ハンバーガーとジュースや牛乳で。建物の裏側には樹木に囲まれたベンチや テーブルがあった。この建物のトイレにはシャワールームがたくさん付いて いる。多分発掘体験ツアーに参加した人が使うのだろうと想像する。   バスの出発時刻を待つ人々の中にドラムヘラーインのダイニングルーム で見かけた老夫婦がいた。

恐竜公園のバスツアー

   
バスは24人乗り。エアコンは無し。窓は上に引き上げられるようになっ ている。ナチュラル プリザーブと称する一般の人の立ち入りを禁止してい る所を案内してくれる。水色の開襟シャツと紺の半ズボン 金色の顎髭をも みあげの所まで伸ばした案内者がバスを運転する。細くてカーブやアップダ ウンの多い道を結構な速さで行くので もうもうと砂ぼこりを巻き上げ ジェ ットコースターほどではないが かなりの横Gを感じさせてくれる。 ウム、 これぞ恐竜サファリなどと思ってしまう。所々でバスを止め 客を降ろして はバスの影に客を集めて 予め案内者がバスに持ち込んで用意しておいた小 さな化石の標本や水彩絵の具で描いたイラストを示しながら説明をしてくれる。 でもこれだけでは わざわざバスに乗った甲斐がないなと 始めのうちは思った。 ところがバスを降りて案内者の後に従ってしばらく岩盤の上を歩くと透明な プラスチックの三角屋根をかぶせた箱があり その中にまだ大部分が土に埋 まった尾の骨のような物が見える。次にバスを降りた所ではドライブコース のそばにあったのと同じようなベージュ色の壁に焦げ茶色の屋根の「鳥小屋」 があり ガラス越しに恐竜1体分の化石が発掘された時の状態で横たわっているのを 見ることができた。


この小屋のすぐそばの岩壁の上に10cm位のT字形の鉄の標識 が立っている。以前この場所で発掘のためにダイナマイトを使った場所を示すもの だと説明があった。ダイナマイトを使ってみて 貴重な化石が傷むことが分 かったので 今ではダイナマイトは使っていないとのことであった。ここか ら日陰のない岩盤を暫く歩いた所に木の化石があった。見たところ象牙色で 普通の割れた倒木のようだが こぼれた破片で叩くと金属のような高い音が するのと手にした破片が異様に重いので これが化石なのだと実感した。  またバスで案内された所は やっと本日のハイライト 恐竜の大腿骨の 化石が風化して露出している所。 ここで案内者が地面から赤茶色の化石を 取り上げ これが背骨の1つ、これが大腿骨の膝の関節の部分というように説 明してくれた。椎体の後方 脊椎管に接する部分が陥凹している所に人差し指をあて がって「こんな風に脊髄があった筈」と説明してくれた。早速その化石を手に持って 案内者と同じような説明するポーズをとってその姿を妻に写真に撮らせた。吉永みち 子女史のカナダ恐竜紀行 の中に恐竜の化石をなめると 舌に吸い付くような独特の感触があったとい うくだりがある。

 それで太腿の骨をなめてみたが あまり急いでいたので 砂を払うこともせずに なめたものだから ただ砂がざらざらと舌に触れた だけで 何も味わうことができなかった。 (日本に帰ってから読んだ本の 中にカナダのタヌキの糞から媒介される回虫は乾燥に強く金属の上でも感染 力を失わないとあった。やはり土の上の物はやたらに口にしてはいけないの だ)しばし自由に化石探しをして良いと言われ 短時間であったが バスの 乗客達は石拾いに夢中になった。この辺りは白い砂岩の上に鉄を含んだ岩が あり その破片が化石によく似ている。これが化石でしょうか?と言う声が 上がる度に 案内者がそこへ駆けつけて いや これは鉄分の多い石ころだ と説明してまわる。結局この時は新たな化石の発見は無かった。  バスの参加者は先に述べた70才位の老夫婦やもっと高齢のカップル 6 0才位のカップル、30才位の写真ばかり撮っていて案内者からcracked pot (頭がおかしいという意味らしい)と言われた男、映画ジュラシック パー クのシャツを着た5才位の男の子などがいた。この男の子は案内者が説明し ている時退屈そうに木の枝を振り回していて 案内者に叱られていた。叱ら れても あまり気にしていないようで 案内者が恐竜の歯を示して 肉食恐 竜のものか草食恐竜のものか尋ねた時は元気な声でmeat eater! などと元気 良く答えていた。2、3人の若い女性も含めて 女性の参加者も結構居た。  砂に埋もれたバッファローの白骨の1部が露出している所へ案内され 化 石ではないものの例として説明を受けた。

そのあと様々な形のHooDoo(ラク ダとピラミッド、岩でできたインディアンのテントのようにそれぞれ愛称がついて いるそうだ)をバスに乗ったままで見学して 2時間の夢のようなバス ツ アーは瞬く間に終わってしまった。    この恐竜公園での一番人気は午前9時出発のケントロサウルスのボー ンベッドへの健脚向けのハイキングだそうだ。これに参加するには公園内の キャンプ場に泊まるか すぐ近くの町Patriciaにホテルをとるしかなさそう だ。興味のある人は試してはいかが。  ガイドのG氏の車に乗り帰路に付く。途中 公園の境界にある 

Entrance  Park

に車を止め 展望台から谷を眺める。

この展望台は周囲の平原と同じ高さで 展望台の下に左右にレッドディア川と その川岸が伸びている様子が見られる。川岸より手前側の眼下にでこぼこした所がある。 その盛り上がりの側壁に製図ペンで書いたような細い白い線が見えるのが車道のようだ。  展望台には1980年にUNESCOの世界文化遺産World heritage site に指定され たことを示す石碑があった。Entrans parkにある世界文化遺産に指定された時の記念碑

 ここから雨に煙る1号線をひた走り約2時間でカルガリーへ。

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