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和工のダットサン1000セダン
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Webでプラモデル創生期の事を見ていたら、面白い記述を見つけた。
即ち、「プラモデルと言う言葉を作ったのは、マルサン商店であり、1958年12月頃日本最初のプラモデル-(カタログ・ナンバー7001)1/300スケール・SSN‐571原子力潜水艦ノーチラスが発売になったと言われている」。
そして、「ノーチラスを入れて(7002)1/25スケール・ダットサン1000セダン、(7003)PT212哨戒水雷艇、(7004)ボーイングB47 ストラトジェットの計4点が同時期に発売になったとあり、たまたまノーチラスのカタログ・ナンバーが7001であったため最初のプラモデルと言われるようになった」。
さらに、「カタログ・ナンバー7002のダットサン1000セダンは、マルサン自身の製品ではなく和工という会社の持込で、一般的に考えたらマルサンより早く完成していなければこのような芸当は出来ない」と。
マルサンのプラモデルですら、もはや伝説と化している現在気になってしまった。
というのは、昔から「このプラモデルは一体何なのだろうか?」と疑問に思っていていた和工のオリジナルの箱入りのダットサン1000セダンがあったからである。
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ブルーバードの前身ともいえるダットサン1000セダンについて調べてみたら、1955年最初の形式名110型が登場し、1957年秋にエンジンをOHC989ccC型にした形式名210型がダットサン1000であった。
1958年9月、当時世界三大レースの一つであったオーストラリアのモービルガス耐久レースに挑戦し優勝した実績があり、注目のクルマであったといえる。 |
問題の和工ダットサン1000セダンの箱
当時のプラモデルにありがちな立派な貼り箱で、側面は左右対称のデザイン |
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この和工のダットサン1000の出所は、もと日産系列のディラーを経営していらした方から頂いたもので、どういうものなのかお聞きする前に故人となられて聞きそびれてしまったのが惜しまれる。
当時の販促商品としてお客様に配られたものかもしれない。
というのも、箱の中には組み立て説明書以外に「1958年度モービルガス耐久自動車レース ダットサン1000 A級に優勝(16000キロ)」という参加-日産自動車株式会社、主催-スタンダード・ヴァキューム石油会社の名入りのチラシが入っていたこと。
それには、「67台参加中35台の完走で、日本から5台エントリーし、内2台が完走し、その2台がダットサン1000であり、しかも、1000cc以下の小型車クラス(Aクラス)で優勝と4位という結果で、3人乗組んでの入賞はこの競技始まって以来の新記録」と書かれている。
また、組み立て説明書には、日産の工場や、ダットサン1000の実車透視図など日産とのかかわりを強く示しているため、優勝を記念として作られた可能性がある。
箱にも、「A class Winner Round Austrarlia Mobilgas Trial 1958」の文字が入っている。
これらの時期的な関係を考慮に入れつつ仮に販促品とすると数量は限られたものと思われ、キャンペーン終了後マルサンに持ち込まれたのでは?なんて考えてみると興味が余計に沸いてくる。
ただ、箱にはCopylight 1959の印刷がある点で、日本最初のプラモデルとするには疑問が残る。
真相はその筋の研究者にお任せするとして、日本最初ないし同時期のプラモデルかもしれないと思うだけでも楽しいではありませんか。 |
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1958年オーストラリア・モービルガス耐久自動車
レース優勝のチラシ |
ダットサン1000の組立て説明書の表紙 |
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左ページは完成直前の説明、モノクロ写真によるため
取り付け位置など推理する以外に方法がない。
右ページは実車のスペックの数値 |
最後の数ページはダットサン1000の透視図や日産
の歴史など工場の話が出ていて、プラモ組立て説明書
としては日産自動車のことが詳しく載せてある点が興味
深い。
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貰った当時は単に昔の車のプラモぐらいの感覚で、貴重なものとは思っていなかったので、今では組み立ててしまったことを後悔している。
現在1/43のミニカーでもデフやリーフ・サスペンションが再現されているのは当り前になっているが、45年以上前の初期のプラモデルも侮れないものがあると感じた。
ただ、組み立てて判ったこともあるので、その点だけ記しておくことにする。
まず、組立て説明書は図示ではなく、モノクロ写真での説明ゆえ接着位置などアバウトにしかわからず、推理しながら組み立てるしかない。
次に、プラスチックの材質が硬くスカスカ・ガサガサした感じのもので良質とはいえず、主要部品は黄ばんだ白い成形色、リーフサスペンション等の一部部品が黒い成形色で、ホイールやライト類などはメッキ部品になっていた。
また、ボディは一体ではなくサイド、ボンネット、屋根、グリル、トランクを箱組みするタイプで精度も良くなく隙間、ねじれ、ヒケは当たり前というものだった。
更にラジエター、エンジンだけでなくデフやプロペラシャフトまで再現され、リーフ・サスペンション、座席、根元からのハンドルがあるのは立派だが、ガラスはないというもの。
とはいえ、組上げると1/25のスケールモデルとして通用するダットサン1000になった。メデタシ、メデタシ。
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現在の復元状態、完成後写真載せます。 |
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参考 Lion氏の「創製の模型屋たち」 http://www5e.biglobe.ne.jp/~sousei/index.htm |
作成日2005年7月 |

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