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黒い宝石 クワガタ
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ここ数年山梨県に居る機会に恵まれ、元来動植物の好きな私にとっては天国のような生活をしています。
山梨県は、甲府盆地を囲むように険しい山々に囲まれ、そこで見られるものは私にとって全て珍しいものでした。
昆虫採集は、多くの方は夏の定番と考えられているでしょうが、実は1年中がシーズンなのです。
私が山梨へ来て最初に見てみたいと思ったのは、黒い宝石と言われる天然のオオクワガタでした。
しかし、これは非常に難しいことだと解りました。
山梨県韮崎の明野村近辺は、マニアの間でも昔から多産地ポイントとして有名でしたが、行ってみるとクヌギは割られ穴という穴にはクワガタを燻り出すための花火で黒焦げの状態でした。
地元の人達も採集屋の傍若無人ぶりから立ち入り禁止の看板が付けられる始末です。
だから、オオクワガタに会えるのはずっと先になりそうです。
今回は、今までに私が山梨で遭遇したクワガタ達です。 |
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今年6月30日昇仙狭にて夜間採集したミヤマクワガタ
♂一般にミヤマクワガタは普通種といわれているが、
それほど数は多くないようだ。 |
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クワガタも♂の発生時期のほうが早
いようで、まだ♀は見かけなかった。 |
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クワガタの雌は他の種類との区別が
一見難しいが、それぞれ良く見てみる
と違いが解ってくる。
ミヤマクワガタの場合、外羽の艶が
比較的強くあり、足の関節に楕円型
の黄斑がある。
慣れてくると前足が、カブトムシのよう
にゴツイのとノコギリクワガタより胸の
形が丸っこく直ぐに解るようになる。
す。 |
比較的大型のミ
ヤマクワガタの
♂ |
小型のミヤマクワ
ガタ♂
小型になると頭の
耳がなくなる |
ミヤマクワガタ♀
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生体の写真は今年採集した新成虫のミヤマクワガタです。サイズは大き目の中型です。
クワガタは、艶々した黒い虫というイメージがありますが、ミヤマクワガタは細かい茶色の毛に覆われていて少し趣きが違います。
他のクワガタとの生態の違いとして昼間も活動するという点があります。夜間電灯に来るというのは他の甲虫類と同じです。クワガタの中には電灯には来ない種類もあります。ミクラミヤマクワガタのように地面を這いまわって飛ばないクワガタ類がその例です。
また、深山(ミヤマ)とついているように多少山の中に行かなければ見られません。ノコギリクワガタやカブトムシの居るところより標高の高い柳類の樹液に来ているものをよく見ます。かといってもっと人里に近い低山でカブトムシ等と一緒に採集できる点で普通種と言われる由縁でしょうか。
クワガタ類の中には一夏で寿命のくるものと数年の寿命を持つものとがあります。
一夏の寿命のクワガタは、気性も荒く喧嘩しますし、用心深さがないようです。オオクワガタは非常に用心深く森の酒場にも他の甲虫類が居なくなってから出没するそうです。
オオクワガタのようなドルグス類といわれるものは寿命が長く、ミヤマクワガタは一夏しか生きません。
標本は2001年と02年に採集したものです。
クワガタは、採取地やサイズによってハサミ等形態や色に変化が多く採集してみると興味深いものがあります。
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ヒメオオクワガタ♂ |
ヒメオオクワガタ♀ |
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オニクワガタ♀ |
小さなクワガタで♂でも
大顎は大きくない |
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天然のオオクワガタは私はまだ未見ですが、ブナやダケカンバの森には、ヒメオオクワガタを見ることが出来ます。ヒメオオクワガタは、オオクワガタに似ていますが、大顎の形が異なり、ヒメと付いているようにオオクワガタよりも小さいです。
渓流沿いの柳やオニグルミ等に樹液を吸いにやってきて、雌は7月中旬の夕方になると活発に活動し、林道のアスファルトの上をのこのこ歩いているものをよく見かけます。
夕刻、薄暗くなったころ野鳥と競争でヒメオオクワガタが路上を歩いているものを採集しました。
何故野鳥と競争かというと鳥もクワガタをご馳走と考えているようで、お腹を食べられたヒメオオクワガタを何匹も見ましたし、お腹を食べられバラバラになったクワガタがまだ動いているなんてこともありました。
この付近では、体長20mm程度の小さなオニクワガタも見ることが出来ます。
雄の大顎の形は変わった形をしていて、鬼の角のように見えるからこの名がついているのでしょうか。
雌の大顎でも他のクワガタの雌と違って上向きの小歯があります。
ブナの林の林床を這っているのを採集しました。おそらく朽木の中に居ると思われますが、まだ住処には遭遇していません。また、灯火にも来るようですが、深山では電気もありませんから、それなりの灯火採集用の灯りを用意しないと難しいです。
夜間は林の中は真っ暗だし、かなり近くで何かの生物が枝や落ち葉を踏む音や鳴き声が聞こえてきて一人だとビビリます。
それがイノシシの群れであれば、ガサゴソという足音に混じって豚のようにブーブーという泣き声が暗闇から聞こえてきます。
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アカアシクワガタ
♂ |
アカアシクワガタ♀ |
スジクワガタ♂ |
スジクワガタ♀ |
コクワガタの小型の♂とスジクワガ
タの小型の♂
スジクワは小型でも少しだけ歯の痕跡がある。 |
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その他、アカアシクワガタ、スジクワガタ、コクワガタ、ノコギリクワガタは、皆さんも良く馴染んだ種類だと思います。
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コクワガタ♂ |
コクワガタ♀ |
ノコギリクワガタ♂ |
ノコギリクワガタ♀ |
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以上のようにまだ、山梨のクワガタ全種類にはまだ遭遇していません。
本州で見られる殆どのクワガタが山梨に生息していると考えられ、今後が楽しみです。
今年は行けませんでしたが、オオクワガタと並んでゲットしたいクワガタにルリクワガタやコルリクワガタがあります。山梨には数種類のルリクワガタが居るそうです。
コルリクワガタは6月頃まだ山が冬景色のころブナの新芽をかじりに来ますが、時期がずれるとなかなか会えません。とても小さなクワガタで知らない人が見たらクワガタとは思わないでしょう。
富士山周辺や増穂には有名な採集ポイントがあります。
昆虫の中でも甲虫類は地味であまりスポットライトを当てられることがない種類ですが、日本では唯一クワガタだけが宝石扱いで、クワガタ狂想曲となっている状況です。
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作成日2003年7月 |

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