エジプト?幻!!


今年の夏は、暑かったですね。私は、1ヶ月の長期休暇を取り、清里で過ごしていました。通常ならエアコンの要らない所なのですが、今年は標高1500mでも日中は30度を越えていました。お盆の頃下界に下りて買物をして炎天下に1時間ほど車を駐車場に止めておいたら車の外気温を計る温度計が39.5度を指しているではありませんか!今後、温暖化が更に進むとこれが当たり前になるのでしょうか?堪りませんね。

さて、今回の表題、「エジプト」とは何のこと、と思われるのが大抵の人の反応でしょう。私もそうでした。
この名でピンとくる人は、筋金入りの超マニアです。

1971年の第1次規制前の黒い金属モデルの洗礼をもろに受けたあるモデルガン好きの方からお話を伺っていたら、その中で出てきた文脈でした。

エジプト製リボルバー用ピカドン・カートリッジ側面
発火による汚れから、当時を偲ばせる迫力が伝わってくる。

弾頭部からの写真、深い穴には
鬼印を20粒以上とマグネシュ
ーム等を詰め、さらに蝋で封緘
した。
低部の写真、よく見ると小さな
穴があるのがわかる。ここに火
薬を一粒入れ、撃発用の火種
とした。
比較写真にしないと良く解らないので、左よりエジプト製、MGC金属ガン用357カートリッジ、MGCプラ・トルーパー用、コクサイ初期357カートリッジ。
シリンダーの前撃針での発火でないエジプト製はフルサイズゆえこれだけ長い。

それは、「あの頃後撃針の大量の火薬を詰めることが出来るピカドン・リボルバーがあったけど知っている。」と聞かれ、?、「それってどこの会社のモデルガンですか?」と聞き返すと、その方が言うには、「それはMGC等のモデルガンをベースにカスタムする会社でエジプト製のものですよ。」と教えてくれました。

エジプト、当時まだあどけないガキだった私は、カスタム・メーカーなんてあること自体知りませんでした。今では有名な六研なら時々雑誌等で特集されているので知っていましたが、エジプトはね。

六研とは、日本を代表するモデルガン・デザイナーの1人である六人部氏が主催するカスタム・メーカーで、六研が表のメーカーなら、エジプトはアンダーグランドな裏のメーカーのようです。
当時のGUN誌に広告がでているだけで、個人の改造屋さんのような存在で、実態は全くの霧の中です。
聞けば聞くほど怪しい雰囲気が漂ってくる・・・。1968年から76年くらいまであったらしく、特に、71年規制前の銃身が閉鎖される前のものが何と言っても凄いらしい。

私が、調べてかろうじて知り得たのはMGCのコンバット・マグナム・ピカドンとモーゼル・ミリタリーBLKだけです。他にもCMCやMGCベースのガバメントBLKがあって、こちらの方が有名らしい。

どう凄いのかというと、映画用の実銃プロップガンのように銃身は筒抜け、いわゆるチョークといってチャンバーの直前で径を絞って火薬の爆風でブローバックさせ、発火は前撃針がないのでカートリッジの雷管の部分に火薬を貼り付け小さな穴から大量の火薬を発火させるというものです。
誘爆を避けるため大量の火薬を詰めた後、蝋で塞ぐのでした。当然センターファイアという訳で限りなく実銃に近いと言えなくもない。

ブローバックと言えば、71年規制前はMGCの独壇場でした。それでもスタート用の火薬エバニューを1枚使用してやっと快調に作動していたのでした。鬼印の紙火薬なら10粒分ぐらいの量です。
そして、銃身にインサートがあり前撃針たるデトネ−タによって発火させ、サイド発火式のため暴発を避けながら作動させるかなりデリケートなシステムだった。

それに対してエジプトは、センターファイア、後撃針、銃身はチョークホールで絞って筒抜けというBLKシステムだったので、デトネ−タ式のような作動上のデリケートさより銃本体の強度のほうが問題だったと思います。

話をまとめて見ると、MGCコンバット・マグナムベース・エジプト・カスタムは、シリンダーは筒抜け、カートリッジはフルサイズで、カートリッジの雷管部分に火薬を一粒付けてハンマーで叩いて発火させるわけです。カートリッジには、火薬だけでなくマグネシュームも詰めて、大音響と閃光を発するのでした。だから、ピカドンなのです。

MGCベースモーゼル・ミリタリーBLKは、銃身を切り落としておそらくスチール製の削り出しをねじ込んでいた。銃身が銀色をしており、外観はノーマルのままだった。
センターファイアに改造されたボルトはスチールで作り直されていたかどうかは記憶にはなく、カートリッジはボトルネックの銀色のものだったことは覚えているそうです。
数発のブローバック試射した感じは、轟音とともにセミオートで確かにブローバックしたと当時を回想されていました。ただ、ボルトが勢いよく後退してくるので、恐ろしくてフル装弾で撃てなかったそうです。
GUN誌の広告で見ると、銃身の上にパイソンのようなベンチレーテッドリブがあって、まるでターゲット・ガンのような形をしています。
値段も、ノーマルのMGCモーゼル・ミリタリー5.5inが6000円だったのに対してエジプト製は24000円と4丁分でした。ベンチ付きは33000円と更にお高い。カートリッジは1発100円でした。

今、71年規制前のものは違法品ですから、合法品に改修して持っておられる方が居たら驚きです。
正に幻のエジプト・カスタムといって間違いないでしょう。
そんな幻のエジプト・カスタムのリボルバー用カートリッジをその方に頂いたので、当時を偲ぶ一助として写真を掲載しておきます。

<エジプト製BLKシステムの構造図>


黄色がカートリッジで、赤が火薬部分で、青が蝋による封緘です。
カートリッジ底部の火薬が発火用の火種でセンターファイアによるファイア
リングピンでこれを叩いて発火させるのである。

発火すると大量の発火ガスがチョークホールから前方にマズル・フラッシュ
として出て行くと同時に後ろへの強烈な反作用によってブローバックさせ
た。

バレルをスチールで作り直すのは当然でしょう。強度がなければ、危険で撃
つことは出来ないと思います。
当時の何でもありの時代ゆえ可能だったシステムと言えましょう。

作成日2004年9月