
|
プロテクトギア 「ケルベロス・サーガ」
Part3
|
去年から今年にかけて、タカラトミーの『プロテクトギア/小白丸忠一 首都警特機隊突入隊員92式特殊装甲服』と、メディコムトイの『紅い眼鏡版特殊装甲服プロテクトギア・ケルベロス01「都々目紅一Ver.」』の二つのプロテクトギアが新たに登場した。
前者は発売以来傑作ないし決定版として多くのHPで絶賛のレビューがなされ、後者はアクションドール化はないと思えた最もチープな初期プロテクトギアをモデル化したもので「赤い眼鏡」公開20周年記念という表題が付いていた。
何で今更「トドメの紅一」なのか?、また、小白丸忠一とはどうしてなのか?という素朴な疑問はあるものの、今までのケルベロスに関する一連の作品群を「ケルベロス・サーガ」と呼び、伝説となった犬狼伝説を今回はある程度整理してみようと思う。これだけ新展開が続くと今後の話についていけなくなりそうなので・・・。
「あの決定的な敗戦から××年――」で初まる『犬狼伝説』、押井監督に言わせればこの犬の話に関わった人は何故か不幸になるのだそうだ。まさか今度のジェネシック・コアやRAHの92式特殊装甲服(プロテクトギア)はそのような心配はないと思うが・・・?
そもそも『紅い眼鏡』は「メガネ」こと千葉繁のプロモーション映画を作ることから始まった話らしい。今回は記述を見つけられなかったが、もともとプロテクトギアは、うる星やつらのTVシリーズ第87話「さよならの季節」のなかで登場した重モビルスーツHMS‐02にインスパイアードされたと何処かで読んだ記憶がある。
その後も押井守がチーフディレクター最後の第128~129話『スクランブル!ラムを奪還せよ!!』『死闘!あたるVS面堂軍団!!』にも登場していた。昭和59年(1984年)の話だから歴史があるのだ。
面白いことに『立喰師列伝(2006年)』の登場人物はうる星やつら第122話『必殺!立ち食いウォーズ!!』のなかでもケツネコロッケのお銀から、牛丼の牛五郎や中辛のサブ、大盛りのマサなど9人が既に勢ぞろいし、『紅い眼鏡』の中でも故・天本英世が伝説上の月見の銀二を演じていた。昔から暖めていた話だったことが伺われる。
|
 |
 |
ドラゴンの地獄の番犬版と比べてもボリューム感は同等乃至
最大級だ、弾帯はドラゴンの金属弾を付けてみた。問題なく
付くが背中の弾倉までには短い。
手持ちでMG34やMG42を撃つ場合、バイポッドを持ってコント
ロールするらしい。地獄の番犬では、加熱するバレルジャケット
を直接持っていたが、人狼ではバイポッドを持っており正確に
描写されていた。
|
悪魔の3人組風
都々目版は映画の中では唯の箱のようなバックパックにしか見え
なかったが、KERBEROS 01の文字や色々なディテールが加えら
れていたことがこれで良くわかった。
通常の1/6ドールの足のメディコムに比べ、CG、GCの足のゴツさ
が特徴的だ。そのおかげで自立させやすいので、文句を言ったらバ
チかぶりだろう。
|
|
このように古いルーツがあると思うのだが、「プロテクトギア」初登場という意味で『紅い眼鏡』から始まる「ケルベロス・サーガ」と一般的には言われている。
一連の作品をを製作年順に並べると、以下のようになる。
@『紅い眼鏡(1987年)』
A『犬狼伝説(未完だった前半は1990年初版)』
B『地獄の番犬(1991年)』
C『人狼(1999年)』
D『犬狼伝説 完結篇(後半−2000年初版)』
E『犬狼伝説 紅い足痕(2005年初版)』
F『立喰師列伝(2006年)』
G最新が深夜ラジオドラマの『ケルベロス 鋼鉄の猟犬(2006年5月〜)』
それぞれの関係は矛盾点が存在する一方、Fの立喰師との関係はハッキリしない部分でもある。あえて言えば、近未来を想定していたのが、@ABDEで、CFGは過去を想定しているという違いがある。
近未来の部分の話の時系列はA→D→B又はE→@となっているようだ。
具体的にはAの『犬狼伝説(未完だった前半)』はテロリスト射殺で終わり(この前半で乾はセクトの連中に殺されていた)、D特機隊がクーデターを起こしたケルベロス騒乱は完結篇で描かれた。
B映画『ストレイドッグ 地獄の番犬 ケルベロス』では首謀者?の都々目が騒乱(1998年)のさなかヘリで一人脱出、中米・南米と転々とした後台湾へと流れていき、乾が逃亡先に追っかけていく話だった、そして紅一は1991年夏帰国するまでを描いた(パンフ中『犬狼伝説』第3話シナリオ抜粋の中で「あの決定的敗戦から44年――」となっていた)。
@映画『紅い眼鏡』では都々目が国外脱出したのが1995年で再び1998年に日本へ帰ってきた時以降の話がメインだった。
さらに、E『犬狼伝説 紅い足痕』では、なにやら訳在りの狙撃手黒崎英斗は騒乱前夜当局に通報し逃亡した。ケルベロス騒乱から3年、黒崎を追う都々目のもう一つのストーリー(「ケルベロスの島(仮題)」という脚本)を藤原カムイのアシスタントだった杉浦守が漫画化したものもあった(地獄の番犬の映画パンフの中でもシナリオが紹介されていた)。なお、『犬狼伝説 紅い足痕』のプロテクトギアは極端なまで犬顔だ。
これらの近未来想定の話は監督の中では終わった話という感じだ。
一方過去を想定した話では、C『人狼』は、押井守原作・脚本ではあるが沖浦啓之が監督しコミック『犬狼伝説』をベースにしたものながら、時代は昭和30年代風、登場人物も異なり上記の流れとは異なるものだった。それは赤頭巾ちゃんをモチーフにしながらケルベロス騒乱前の伏線の話を描いたものと思われた。
『犬狼伝説01捨犬』の中の付属資料を見てみたら以前の初期設定資料と変化はなかったが、新しいことも書いてあった。例えば、「人狼」とは首都警内部に存在する対敵情報組織のことであるらしい、決定的に敗戦した相手国はドイツという架空設定は映画「人狼」の中の話というより、もう一つの戦後史として占領統治軍(ドイツ)の意匠を受け継いだプロテクトギア・デザインや武器装備類は暗黙の了解として犬狼伝説のベースになっていた。
従来から特機隊の武器類はMG34、マウザーC96、PPKが隊員の装備として知られていたが、後方支援隊員はMP44(StG44)を装備し、小・中隊長、副官はルガーP08が支給されているそうだ。また、特機隊隊長巽志朗はルガーP08/14アーティラリー(8inのことね)、特機隊副長半田元ステイヤーP12、首都警公安部長室戸文明はザウエルP1913を愛用しているとあった。
そして、本格的に過去に戻ったのが深夜に放送したラジオドラマ『ケルベロス 鋼鉄の猟犬(2006年5月〜)』という第2次大戦下の東部戦線(1942年)の架空戦記の話で、マキ・シュタウフェンヴェルク大尉という女性が主人公だ。当然出てくるプロテクトギアも旧式というか古い原型になる。それは甲冑そのもので弾丸を跳ね返したり、パワーが増幅されるものではないらしい。未弥純による中世の甲冑とドイツ軍ヘルメットを組み合わせた犬顔のブラック・ナイツのようなデザイン画が公開され、『ケルベロス 鋼鉄の猟犬』版第二次大戦当時の12インチ1点もののプロテクトギア・フィギュアも公開されている。何でも出てくるプロテクトギアゆえ、これも1/6で発売されるのかも???
その上3年後を目処にケルベロス・サーガの新たな映画化が目論まれ、今度は戦争がテーマとなるらしい。
|
 |
 |
 |
「出渕デザイン」 |
「竹内デザイン」 |
「紅い眼鏡」版のプロテクトギア(写真左)と
コミック「犬狼伝説」に載っている出渕デザインの92式特殊
装甲服のイラスト(写真真中)
メディコムは映画版を忠実に再現したものだそうだ。
イラスト同様マガジンポーチを左腰に装着しているが、以前
は意味不明であったがMP44用なのか? |
今のところ決定版と言われるタカラ
トミーの92式特殊装甲服
パイピング等は初期のイメージを踏
襲しながら全体バランスを適正化発
展させた遊べるアクション・フィギュア
となっている。 |
 |
 |
 |
 |
ちょっとユーモラスなブルドッグ系の犬顔マスク
中のヘッドが小型化したのが貢献し、ヘルメットも絶妙サイズになった。
前作翠に比べてサイドの造詣は格段にバランスが良くなった。 |
お待たせの「紅い眼鏡」版マスク
正面は細面で何となくモールドがあまい印象だ。サイドから見た
ヘルメットはいい感じだ。 |
|
最後に私の感想も簡単に述べておこう。タカラトミー版のプロテクトギア・デザインは『イノセンス』等のメカ・デザイナーである竹内敦志が担当しているのだが、マスク周りのパイピングを見ても出渕デザインは原案という形で『紅い眼鏡』のイメージを踏襲しながら、人狼のプロテクトギアとも相通ずるデザインになったように思える。新たな展開上既存の紅一や蒼一郎といった登場人物とあえてバッティングを避け、固定観念が出来ないよう小白丸忠一なる人物を使ったのだろうか?理由はよく判らない。
このバージョンを何といったら良いかわからないが、何々版という原型モデルのない新造詣といったほうが良さそうだ。とはいえ従来のイメージを崩すどころか更に推し進めた上、遊べるアクション・フィギュアとして現状考えうる最高のものだろう。
細かい点を見てみると、マスク装着のため目だし帽を被せるのに胴体アーマーを前後に外さなければならないのは前作翠と同様。パイピングの違いから若干手間がかかるも簡単に脱着できのでストレスは感じない。
左肩のスパイク付きアーマーも可動式二重装甲になったりバックパックが本来のサイズになったと同時に樽の様な弾倉入れが装着出来る新デザインも採用された。MG34と弾帯をスムーズに連結できて素晴らしい。その分仕方ないことだが、重心が後側となり立たせるのが難しくなったことが難点か。
前作ではヘルメットのパーティングラインが少し目立っていたが、綺麗に改善されていたし、オーバーサイズのバランスも均衡がとれるものになった。
翠の吸排気パイプは銀汚しのせいかベタ付きがあった。今回は銀汚しを止めたおかげでベタ付きはない。全体塗装は翠の場合半ツヤから忠一はツヤ消しとなり凄みが増した。
そして、今までのプロテクトギアは交換用バレルをバックパックに取り付け出来ないことが不満点であったが、今回は可能になったことも嬉しい変更だ。MG34もそうだが発射速度の高いMG42は、頻繁に加熱したバレルを交換し冷却しないとバレル自体を損傷してしまうのである。地獄の番犬の中でもMG42のバレル交換をリアルに見せていた。
付属のMG34もドラゴンのものに比べて遜色ない良い出来だ。MG34はバレルジャケットを回転させてバレル交換するのだが、ドラゴンより固定がしっかりとして好感が持てた。
勝っている点は、バイポッドが左右に振れる可動式になっている点、それに対しドラゴンは固定式だ。MG42ではドラゴンのチャージングレバーが引ける改良があったがMG34は知らない。タカラトミー版はもちろん可動。今のところドラゴンに負けているのは金属弾を差し込むリアルな弾帯が付属しないだけだとあえて言っておこう。
|
 |
左からドラゴン番犬版、メディコム番犬版と紅い眼鏡版、タカラトミー版小白丸
同じ92式特殊装甲服だが、今となっては番犬版が異質に見えてしまう。 |
|
それに対してメディコムトイの都々目紅一、以前の地獄の番犬版に比べサイズを含めて悪くはない。進歩したRAHベースのため当たり前だが、質感という点では今一歩だ。
ヘルメットや肩アーマーにはパーティングラインは残っているし、塗装されていないためチープな印象なのだ。
もっとも、今見てもプロテクトギアが世に出た最初の造形として時代遅れなデザインとは思えない。サーガの原型たる出渕デザインのメディコム版には原点回帰の存在価値は十分にあるだろう。
今回一番気にいった部分はMG34の弾帯を左胸にクリップ出来るところだ。だいたい劇中においてこのプロテクトギアは冒頭僅かに登場するだけなので、バックパックのディテールもこのフィギュアを見て初めて知りえた部分でもある。
しかし、バックパックと胸とを短い弾帯で繋ぐには少し短く、撓むのが気になる。おまけに劇中の弾帯の向きと明らかに逆にしないとバックパックに届かない。元箱に小さな写真はあるものの説明がなければバックパックの弾の出口に直ぐに気づく人は少ないのではなかろうか?
次に、紅一Ver.と名前が付いていたから、マスクの下に劇中設定年齢28歳の紅一(千葉氏)の顔があると思っていたがそれは違っていたようだ。というのはヘルメットやマスクは固定接着されているからだ。ヘルメットを強引に外したら頭頂部に四角いダボ穴がありマスクの生地ごと挟み込み接着されている。仮にマスクを剥がしても顔はない予想。
その結果全体のバランスは良く頭でっかちにならずスマートなフォルムを作っている。
MG34もカバーの開閉しかできず、チャ-ジングレバーやバイポッドも可動しないだけでなくバレルチェンジも出来ないちょっと残念なものだ。パーツで買うと3990円とあり値段を考えると余計そう思ってしまう。
防盾にはマウザーが入るようになっているが、完全に見えない位置までは入らなかった。しかし、実物プロップも完全に見えなくなる位置まで入らないらしいのでこれで正しいのだ。ただ、MG34もマウザーももっさりした感じのモールドでシャープさは全くない。PPKもホルスターと一体だった。これらもはちょっと残念。
値段的にはジェネシック・コア18690円に対して紅一18900円とほぼ同等なのでメディコムとしても何か頑張っておかないと辛い立場と言えそうだ。全体的に比べた場合ジェネシック・コアの圧勝なのだが、紅一Ver.も実写モデルということで番犬版同様貴重な存在なので、一つぐらいは手元に置いておこう。
G・Cも、ケルベロス・サーガもまだまだ終わらない、こちらも付き合うのは大変だ。タカラトミー版プロテクトギアのような遊べるアクション・フィギュアを入手した人達の次なる野望は小隊を組むことに確定したといえよう。マスクがあるとは言え同じヘッド、同じ体格というのは考えものなので、複数買いは今後のバリエーション展開の情報が明らかになってからのほうが良いかもしれない。
|
 |
奥の2挺がドラゴン製のMG34、手前左がタカラトミー製で右側のもっさりした感じのがメディコム製
カバーを上げ、弾帯装着は3社とも可能だが、バレルチェンジ出来るのはドラゴンとタカラトミーだ。
タカラトミー製の弾帯のケースが黒いのは大戦後期には物資不足のため鉄製のものだったから、手抜き
ではではない。但し、グロスの黒といのは質感が悪い。 |
|
参考文献:「犬狼伝説」 原作:押井守/作画:藤原カムイ 日本出版社
KERBEROSSAGA.JP BOOK「犬狼伝説 01 捨犬」 |
作成日2007年6月 |
Indx 
|