太宰治と、喜久乃湯
太宰治が、御坂の天下茶屋から甲府に降りてきたのは、昭和13年10月のことでした。
井伏鱒二の勧めで、石原家の長女・美智子との 縁談がまとまり、太宰にとっては新しい
人生のスタートでした。
御崎町でのハネムーン時代が、小説家・太宰治の生涯で一番幸福だったといわれます。
この時に借りていた家が、喜久乃湯から1分程の所にったわけです。
結婚してからも太宰は毎日変わらず小説を書いては、喜久乃湯に行き、晩酌をしながら夕飯を食べていたようです。
酒は1円50銭の地酒を主に注文し、月に酒屋に払う支払いは20円くらいだったと美智子は書いています。
酒の肴はもっぱら湯豆腐、太宰夫婦の慎ましい生活が目に浮かんできます。