犬狼伝説版 プロテクトギア 鷲尾 翠


鷲尾 翠と聞いて誰だか判る人は一握りだろう。
今回タカラが、以前から展開していたクールガールのラインにコミック版プロテクトギアを加え、ノーマルのブラックVer.に続いて、ジャーマングレーVer.を追加した。

彼女は押井守原作・藤原カムイ作画の漫画『犬狼伝説』の中に登場する首都警(首都圏治安警察機構)の武装部隊である特機隊(特殊武装機動警備大隊)のメンバーである。
ストーリーの中ではプロテクトギアを装着していた唯一のヒロインだが準主役の登場人物でしかない。
もっとも時系列的には実写の『赤い眼鏡(1987年)』が先であり、これにも悪魔の三人組の一人として登場する女性である。この作品で「鷲尾みどり(25歳)」を演じたのは声優の鷲尾真知子であった。アニメ「うる星やつら」の怪坊主チェリーの娘、友引高校保健婦サクラの声と言えばおわかりでしょう。この映画『ビューティフル・ドリーマー(1984年)』と同様夢と現実がテーマとなっており、モノクロ映像(一部カラー)と相まって「地獄の番犬」より見やすい映画となっている。


なおかつ作品ごとにそれぞれプロテクトギアのデザインも異なっていたが、実写やコミックのプロテクトギアのデザインは出渕裕であった。なおアニメの人狼版には参加していない。
ただ、藤原カムイのコミック版といってもクールガールに合わせてアレンジが加えられているので、各所が忠実に再現されたものではない。マスク・デザインや吸排気パイプ等異なるところは多々あるし、バックパックの装備類も女性という前提で軽装にアレンジされている。
一番比較してしまうマスク周りもコミックでは他の突入隊員と同じプロテクトギアを翠さんも着ている。しかし、設定では色々なタイプが存在することになっている。今までのマスクの中では異質な顔つきと言え犬顔というより鼻筋の通った女性的な優しさを感じた。

また、コミック中においてヘルメットにナンバーは描かれていないが、後述の初期設定では突撃小隊の前衛3人組として紅一、翠、蒼一郎がチーム組んでいるとあるだけでナンバーについて記述はなかった。『地獄の番犬』パンフ中では射的屋の異名を持つナンバー02「鷲尾みどり」とあり、03の根拠はハッキリしない。「鷲尾みどり」と表記されていることから『紅い眼鏡』撮影時には02だったのだろう。ちなみに『犬狼伝説 紅い足痕』の中では紅一は最初03ナンバーを付けていた。黒崎が08となっていた。


一応タカラHPによると、ケルベロス・プロジェクトが始動しプロローグが鷲尾翠で、今冬にはケルベロス・サーガが本格始動とあり、単発で終わらないらしい。楽しみなことだ。

犬狼伝説版プロテクトギア・鷲尾翠 in CG ノーマルのブラックVer.
凄みはブラックVer.の方がある。射的屋の異名を持つ翠、ストック付きマウザーは漫画の中でも活躍して
いた。マウザーは木製ストックの中に収納可能だ。バランスも最高!!シュマイザーは部分的に?か。
一番気になったのは、ヘルメットのパーティグラインが目立つことと、入念にデザインされたヘルメットだが
僅かにオーバーサイズぎみでバランスを崩していることか。


上写真−犬狼伝説版プロテクトギア・鷲尾翠 in CG ジャーマングレーVer.
マスク・ヘルメットで顔を被わなくても生顔でディスプレーして様になる。
写真のカンプピストル、ラフェッテ付きMG34及び装備類はドラゴン製

こういうマイナー系のものに批評を書くこと自体見当違いだが、それでもちょっとだけクールガールについてコメントしてみたい。

そもそもクールガールのコンセプトは、男性向けのセクシーボディ+リアル顔植毛仕上げのアクション・ドールであった。クールガールの特長であるこのセクシーなボディラインを出すため胸・腰周りや手足のバランス等強調されていて、コスチュームを着せ付けた状態で最良の格好良さが求められている。
例えば、コスチュームの材質と縫製の工夫により布のテンション利用して股関節にある可動のための隙間もあたかも詰まっているような感じを持たせて女性型アクションドールの欠点をコスチュームの観点から最小にすることに成功している。
更に激しいポーズ取りが可能な上、スタンドがなくとも自立させ易い特性を併せ持っていることも付け加えておこう。


性格付けも特技を持ったエージェント乃至クールなスーパーガールであったが、リアルな外観を持っているのに設定は架空のものなのだ。つまり、精密なミニチュア・レプリカを売りにしている訳ではない。そのため一部に熱烈なファンがいても広く一般にアピールする力が弱い印象だっだ。

開発者も当初の性格と変わり何でもありのシリーズになってきたとタカラのHPにコメントされ、間口を広げてきている。
クールガールの場合、あるキャラがリアル顔になったらこんな感じというイメージさえ壊されなけばトータルで新解釈が可能な点に発展性があり、アートな香りのする大人のコレクタブル人形の方向性が視野に入ると思う。一部カスタムでは既に試みられているが、量産品ではまだチャレンジされていない。従来の可愛い系の女玩やキャラクターフィギュアと大きく異なる新しさとなるのではないだろうか。

そういう意味ではクールガールとヴォ−クスの人形は現時点の最先端ドールの姿を示していると思う。

動物的ではない翠マスク、
番犬版は犬というより鼠顔
になったらしい
犬狼伝説表紙
1990年未完コミック
タカラ製鷲尾翠漫画イメージ
キャラものとしては許容範囲の出来だと思うがどうだろう?
色々なマスク造形がある訳だがパトレーバー2以降出渕裕はメカデザインを担当しなくなったため、人狼以降の作
品では漫画の犬狼伝説の原案デザインから派生させたものに変化してきている。
今回の鷲尾翠もその流れの中の1つなのだが・・・。
狼版は監督の沖浦啓之がアレンジしたそうだし、既にドラゴンとメディコムから発売になっている。
可能性は低いが最もチープな赤い眼鏡版が仮に出たらラインがほぼ完成することになる。胸部には何故か電卓が付
いている。何か計算するんでしょうか? フッ・・ そうそう「紅い足痕」版もあるか・・・

では、翠さんはどんなでしょう?
第一印象は、パーツ段階でアーマーの精度の高さと武器のシャープな出来にまず驚かされる。取り付けてもその印象は変わらない、既存の甲冑タイプ・ドールの中でも非常に完成度の高いものである。
凛々しいカムイ顔の翠さんになっているのでコミックファンも納得する人が多いだろう。
ただ気になる点は、タクティカルパンツが腰周りでダブつきアーマーを取り付けると浮いて巨大化して見えてしまう弊害があることだ。意図的なバランス採りとはいえ腰に合わせて肩アーマーも大型化しているためジオンのモビルスーツを連想してしまうのは私だけか?
マスクの眼鏡も赤色集光レンズが使われ反射で光るように考慮されているが、やっぱり平面ガラスの方がイメージか・・・。


後は、ジャーマングレーVer.にはマーキング用デカールが用意されているのは親切だ。しかし好きに貼れというのも不親切だと思う・・・。せめて設定だけでも公開して欲しい。
漫画「犬狼伝説」の中では左手の防盾にツバメのような白マークのあるカットがあったが、マークかどうかは不明。

犬狼伝説 設定解説 押井守編(日本出版社のコミックに載っている犬狼伝説の初期設定)によると三頭犬のエンブレムを付けてケルベロスと呼ばれるのは突入隊員だけだそうだ。更に、特機隊の組織は、大隊本部の下に第1から第3中隊が存在し、他にも輸送、通信、衛生、特科、管理等の中隊が存在した。例えば第1中隊ならば、第1突入小隊、第2突入小隊、第5小隊の3小隊からなり、通常小隊は、前衛3名、第1狙撃手3名、後方支援3名、隊長1名、副官1名の計11名が基本で、突入小隊 (シュトルムグルッペ)は突破力重視の構成で、前衛3名×2チーム、第1狙撃手3名
となっていた。
因みに、鷲尾翠は、第1突入小隊に属し、都々目紅一と鳥部蒼一郎の2人とチームを組んでいた。前述の紅い眼鏡における悪魔の3人組だ。かなり古い設定ゆえ一応参考と言うことで・・・。

右側マウザー+木製ストック兼ホルスター付きは
タカラ製
ドラゴンに比べマガジンの脱着しか出来ず、可動
部分はない。スタイルはバレルがドラゴンより細い
事と左右の併せの隙間が目立つ以外、スタイリン
グに特に問題ない。
ドラゴンより優れている点はランヤードリングが付
いていることだ。

左側PPKとM712はドラゴン製
「地獄の番犬」版に付属していたもの
PPKは戦前バージョン
マウザーには当時驚かされた。
ボルトは引けるは、ハンマーやセ−フティも可動、
クリップも装着が出来た。

考えてみればプロテクトギアも1/6サイズでほぼ出揃ってきた感があり、この手のアイテムとしては恵まれた存在だろう。

プロテクトギアを眺めつつ一連の作品群を自分なりに整合性、ストーリーを読み解いてみるのも秋の夜長にはピッタリでしょう。
参考文献:「犬狼伝説」 原作:押井守/作画:藤原カムイ 日本出版社
作成日2005年11月
2007年2月追記